明治期の英語教科書と独案内:ウィルソン・リーダーを中心に |
2011/07/04更新
ICTを活用した英語学習のすすめ:明治期の英語教科書を読む(平成21年度公開講座)
馬本研究室
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英語の語順と日本語訳について
ウィルソン・リーダー
Marcuis Willson(1813-1905) 米国の教師,弁護士。数多くの「定番」学校教科書を残した。
The First Reader of the School and Family Series
The Second Reader of the School and Family Series
The Third Reader of the School and Family Series
・幕末から維新後にかけ各地で起こった洋学塾・英学塾で採用された英語読本中,首位の座を占めた。
・明治5年の学制発布を受け明治6年文部省より出版された田中義廉(たなか よしかど)編『小学読本』の編纂に際しても全面的に参照された。
・明治15〜20年頃訪れる第2期英学熱高揚期にまで人気を保ち続けた。 (大阪女子大学附属図書館, 1991)
本邦英学を修むる者必ず米人マーシアスウヰルソン氏第一読本或はサンダース氏ユニオン第一読本を以て之か階梯とす (生駒蕃『サンダース氏第一リードル独案内』柏原政次良ほか, 1885)
ウィルソン・リーダー独案内
此書はもと初学児童の為に訳するものなれば勉めて了解なし易きを旨とし悉く片仮名を用いて訳語の耳慣たるをしるし□の印を以て顚倒を示し原語には稍英音に近きものを選んで仮名を附したれば毫も師友の輔を煩はさずして明了に読下するを得へし故に題して独案内と云ふ
(西山義行『ウヰルソン氏第一リードル独案内』岩藤錠太郎ほか, 1883)
当時はこの種の独案内が数多く出版されていて,たとえ訳者が異なっていても,大抵同じ形式を採用している。訳語も同じようなものが使用されていて,現在からみて不自然なところや誤りは大体同じようなところに見出される。 (大阪女子大学附属図書館, 1962)
ウィルソン・リーダー独習書
明治5(1872)年 |
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1-1)『ウィルソン氏英第一リードル插訳』(林箭山蔵版)紀伊国屋源兵衛 |
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明治6(1873)年 |
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明治7(1874)年 |
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明治8(1875)年 |
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明治9(1876)年 |
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明治10(1877)年 |
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明治11(1878)年 |
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明治12(1879)年 |
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明治13(1880)年 |
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1-2) 村井元道『維孫氏第一読本直訳』三浦源助(成美堂) |
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明治14(1881)年 |
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1-3) 中村愿『ウヰルソン氏第一リードル字書』
松井忠兵衛ほか |
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明治15(1882)年 |
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1-4) 岡田篤治『直訳ウヰルソンリードル原書独案内』岡田篤治 |
2-1) 村井元道『ウィルソン氏第二リイドル直訳』三浦源助 |
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明治16(1883)年 |
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1-5) 西山義行『ウヰルソン氏第一リードル独案内』岩藤錠太郎ほか 1-6) 栗野忠雄『ウヰルソン氏第一リードル直訳』栗野忠雄 1-7) 真野秀雄『ウヰルソン氏第一リードル独稽古』競錦堂 1-8) 青木助三郎『ウィルソン氏第一リードル独学字彙』青木助三郎 1-9) 中村愿『ウヰルソン氏第一リードル音読』中村愿ほか |
2-2 大場景明『ウヰルソン氏第二リードル独学』金章堂 2-3) 西山義行『ウヰルソン氏第二リードル独案内』加藤鎭吉ほか 2-4)『錦織精之進ウヰルソン氏第二読本直訳 上巻』梅原亀七 |
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明治17(1884)年 |
0-1) 関根定吉『ウヰルソン氏プライマル英学独稽古』井上蘇吉 |
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2-5) 一川真輔『ウィルソン氏第二リードル独案内』起業館 |
3-1) 栗野忠雄『ウヰルソン氏第三リードル直訳』栗野忠雄 |
明治18(1885)年 |
0-2) 外村譲『ウヰルソン氏プライマー独案内』淡海書房 0-3) 前田元敏『ウヰルソン氏プライマー独案内』花井卯助 0-4) 岡本信『ウヰルソン氏プライマ−独稽古』清水卯三郎ほか |
1-10) 馬場栄久,細井僖吉『ウヰルソン氏第一リードル独案内』随時書房 1-11) 田中利堅『ウィルソン氏第一リードル独案内』赤沢政吉 1-12) 吉田守善『ウヰルソン氏第一リードル独案内』山中市兵衛 1-13) 生駒蕃『ウヰルソン氏第一リードル独案内』柏原政治郎等 1-14) 高柳政籌『ウヰルソン氏第一リードル独案内』大野堯運 |
2-6) 生駒蕃『ウヰルソン氏第二リードル独案内(第一冊)』『同(第二冊)』柏原政治郎等 2-7) 馬場栄久,細井僖吉『ウィルソン氏第二リードル独案内(第一冊)』『同(第二冊)』随時書房 2-8) 西山義行『改正増補ウヰルソン氏第二リードル独案内(第一冊)』『同(第二冊)』加藤鎭吉ほか |
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明治19(1886)年 |
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1-15) 高柳政籌『ウヰルソン氏第一リードル独案内』津田市松 1-16) 近藤駒吉『正則第一リードル独案内』佐藤書屋 |
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明治20(1887)年 |
0-5) 『ウィルソン氏プライマ独案内図解』坂田善吉 0-6) 山本研治『ウヰルソン氏プライマ−独修便法』東崖堂 0-7) 太田国直『ウヰルソン氏プライマ−独案内』榊原友吉ほか |
1-17) 高柳政籌『ウヰルソン氏第一リードル独案内』永野亀七(1-14の翻刻) 1-18) 佐藤雄治『ウィルソン氏第一リードル独案内』吉岡平助 |
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独習書の比較(事例研究)
The ape and the ant.
The ape has hands.
The ant has legs.
Can the ant run?
直訳
1-2) 大猿及蟻,大猿ハ手ヲ持ツ,蟻ハ脛ヲ持ツ蟻ハ走リ得ルカ
1-4) 猿而メ*蟻 猿ハ手ヲ有ツ 蟻ハ足ヲ有ツ 蟻ハ走ル能フカ
アップ アント ハズ ラン ケン
1-6) 猿ト而シテ蟻 猿ガ手ヲ持ツ 蟻ガ足ヲ持ツ 蟻ガ走リ能フカ
独案内
1-5) ゼ エープ アンド ゼ アント
[一]サル [二]ヲヨビ [三]アリ
ゼ エープ ハス ハンズ
[一]サルハ [三]モツ [二]テヲ
ゼ アント ハス レグス
[一]アリハ [二]モツ [三]スネヲ
キャン ゼ アント ラン
[三]アトフカ [一]アリハ [二]ハシリ
1-7) ゼ エープ エンド ゼ アント
[一]猿 [二]而(ソウ)シテ [三]蟻
ゼ エープ ハズ ハンズ
[一]猿ガ [三]モツ [二]手ヲ
ゼ アント ハス レツグス
[一]蟻ガ [三]モツ [二]脛(ハギ)ヲ
ケン ゼ アント ラン
[一]能フカ [三]蟻ガ [二]走リ
参考文献
馬本 勉 (2010).「明治期における英語読本独習書の研究:森修一の独案内に見る英語学習の諸相」『日本英語教育史研究』第25号 pp.89-111.
江利川春雄 (2011).『受験英語と日本人:入試問題と参考書からみる英語学習史』研究社.
大阪女子大学附属図書館(編)(1962).『大阪女子大学蔵日本英学資料解題』大阪女子大学.
大阪女子大学附属図書館(編)(1991).『大阪女子大学蔵蘭学英学資料選』大阪女子大学.
大村喜吉・高梨健吉・出来成訓 (1980).『英語教育史資料 第3 巻 英語教科書の変遷』東京法令.
松村幹男 (1978).「英語学習参考書の歴史」『教材と教育機器』(現代の英語教育9)研究社出版. pp.83-102.